中川 亮(デザイナー)|「SUGOI」が世界の共通語になる大会に
2024.11.20
セイコーグループ株式会社
コーポレートブランディング部
2023.10.05
世界陸上競技選手権大会のオフィシャルタイマーを務めるセイコーグループ株式会社。
大舞台の裏側で、正確さを問われる「計時計測」を
経験してこられた同社の相澤さんを取材した。
相澤 1985年にWA(World Athletics|世界陸連)と協賛契約を締結して以来38年間、現在まで継続させていただいています。また、競技者の記録を計測し順位を確定する公式計時「オフィシャルタイマー」は、第2目回のローマ大会から、今大会で連続18回目ですね。ちなみに今年開催されたブダペスト2023世界陸上では、日本代表オフィシャルスポンサーを初めて務めました。
相澤 セイコーのオフィシャルタイマーとしての役割は、全選手の競技のタイムや記録を正確に「計時計測」し、わかりやすく会場の観客の皆さんに伝えること。正確でミスのない「計時計測」を通して大会を支えることだと思っています。
他にも『セイコーわくわくスポーツ教室』を開催しています。国内でも年数回行っている事業ですが、世界陸上が行われるときにはスペシャルバージョンとして、『Time to Shine』(※1)というネーミングで現地開催もしています。『TEAM SEIKO』(※2)という当社アスリートたちに講師をお願いし、教室に参加した現地の子どもたちにウォーミングアップや実技などをレクチャーします。そのあと100m走を行いますが、世界陸上で使用している当社の機材で子どもたちのタイムを計測するんです。本番さながらの演出に、子どもたちはすっごく喜んでくれるんですよ。
※1 Time to Shine:
次世代アスリート支援と陸上競技振興を目的にセイコーが開催するイベント。現地の陸上競技に打ち込む10歳から12歳までの男女を対象に、世界陸上と同じ会場・機材を使用して陸上教室を開催。
※2 TEAM SEIKO(チームセイコー):
スポーツを通して人々に感動を届け、セイコーのグループパーパスの一端である“世界中が笑顔であふれる未来づくり”を体現するアスリートのチーム。
相澤 ミスのない計測や計時を38年間行ってきたことや、時代にあわせた機材の提供などにより、継続的な関係性を築いてこられたからではないでしょうか。「我々のひとつの誇り」かなとも思います。精度の高さを求められる仕事ですので、信頼性が大事ですよね。
陸上は着順を争う競技であり、トラック競技の場合は選手の着順記録が100分の1秒まで同じだった場合は、1000分の1秒まで計測をします。その1000分の1秒の判定が、勝負を決するんです。そうした高い精度を追求し、その技術を磨き続けることが当社の理念であり、創業当初からめざしてきた姿勢です。時計の会社ということもありますが、陸上や競泳などの計測競技との親和性もあったので、世界陸上や東京マラソンといった大会の協賛企業を今日まで続けてこられたということもあるでしょうし、これからもさまざまな大会や競技を支え続けていく、それは当社の変わらない信念だとも思っています。
相澤 2009年のベルリン大会で、ウサイン・ボルト選手が世界新記録を出したときですね。当時はスポーツタイミング部のチーム(以下、タイミングチーム)として現地に行き、計時計測部門のスタッフとして活動していたんですが、男子200mの決勝で、わたしはちょうどトラックのスタート地点で機材の操作やテクニカル面をケアしていたんです。
ボルト選手が走り終わって19秒19をタイマーが表示した瞬間、ホントに地震が起きたみたいに会場が「ワア~~~~~!!」って沸いてゾクゾクしました! あの瞬間の感覚は世界新記録が出たときだけですね。あの独特の空気感・・・ホントに会場の空気が揺れるんですよ~(笑)。一斉にみんなが立ち上がって歓声を上げるからだと思うんですが、国を問わず会場にいる観客全員が世界新記録を喜んでいる感じでした。それを体験できたことは一生の宝ものです。
相澤 18回もオフィシャルタイマーを務めていれば、あります・・・(苦笑)。どんなに準備を万全にしていても、一般の機械と同じように計測機材にも絶対はありません。本番直前の機材動作テストで問題がなくても、本番スタート時に機材がうまく稼働しないということもあります。そういうことがあるからこそ、メインの計測システムが万一稼働しなくなっても大会が問題なく運営できるよう、二重・三重のバックアップシステムを必ず構築して大会に臨んでいます。
選手にとっては一生に一回しかないレースかもしれないし、同じパフォーマンスはできないかもしれない。もう一回レースや試技をしてもらうようなことが起こらないように、バックアップを含めた機材の改良をさらに重ねています。
こうしたシステムの改良や機材の準備は、協賛企業として長年大会にかかわってきたからこそ培った知見でありプライドですね。
相澤 コロナ禍の影響で1年延期となり、2022年に開催されたオレゴン大会でも同様でしたが、世界陸上で大会の裏方として計測業務を担うタイミングチームの活動を密着取材し、ドキュメンタリームービーを制作しています。その撮影チームとして今回も参加しました。
現地ではまず設営から始まり、機材をセッティングして動作確認を行いながら、機材の計測精度を高めていき、計時システム全体を構築していきます。うまくいかない場合は何度も何度もトライします。機材にあたる光のバランスや角度など微細な点まで一つひとつクリアし、極限まで精度の追求を行うんです。本番では何十種目もの計測を行うので、常に正確を期し、少しのミスもないようにしなくてはならない。その不安を取り除くためには妥協することなく完璧な精度を追求し、大会当日を迎える・・・。そういうシーンを現地で2週間近く取材し撮影してきました。
そういう過程を振り返ると、タイミングチームもある意味アスリートに似ているかもしれません。本番まで計時計測業務の鍛錬を積んで、挫折もありながら本番に向かって100%のパフォーマンス(計時計測)をする。本当に、準備がすべての仕事だと思います。
【Documentary of SEIKO TIMING TEAM】
普段は大会の裏方として計時支援に奔走する「セイコー タイミングチーム」のオレゴン2022世界陸上の成功にかける、計時計測への思いにスポットライトを当てたドキュメンタリームービー
※ブダペスト2023大会版は後日公開予定
相澤 中学生から陸上を始めたんですが、大学時代に400mハードルで出場した大会で、表彰台に上がるという経験をしました。そのとき、パッと目に飛び込んできた大会の公式計時機材がSEIKOだったんです。その光景が目に焼きついていたことと、大学まで陸上を続けてきたこともあり「スポーツ関係の職場で働きたいなあ」と思ったときに、自己ベストで表彰台に上がったそのシーンが自然と浮かんだんです。「わたしにとっての特別な瞬間にSEIKOがいた」というところですかね。採用面接のときにも、その話をすごく一生懸命伝えました(笑)。
相澤 ここでは主に3つのことを行っています。
1つめはスポーツ大会の協賛です。各種スポーツ大会に協賛することでいただくTVCMや看板の掲出などさまざまなマーケティング権利を有効活用し、自社の価値向上を図ります。また、世界陸上と同じようにオフィシャルタイマーを務める大会は、タイミングチームと連携して大会運営に欠かせない計時計測機材やサービス提供の調整もしています。
2つめが『TEAM SEIKO』のサポートです。メンバーは、陸上女子100m・200mの日本記録保持者で、引退した現在は『セイコースマイルアンバサダー』として活動する福島 千里さんや、同じく陸上の山縣 亮太選手(男子100m日本記録保持者)、デーデー ブルーノ選手、競泳の坂井 聖人(まさと)選手、大橋 悠依選手、佐藤 翔馬選手、トランポリンの棟(むね)朝(とも) 銀河選手ら7名のアスリートたちで構成され、アスリート支援を行わせていただくとともに、スポーツ教室などのイベントに参加してもらう際の調整やケアなどを行います。
3つめは次世代教育です。未来を担う子どもたちに向けてTEAM SEIKOのアスリートたちが講師をする『セイコーわくわくスポーツ教室』を開催して、その運営に携わっています。アスリートとのふれあいや、大会で使用する計測機材を実際に用いて走ってみるという体験を通して、スポーツの楽しさや喜びを感じてもらいたい。当社が提供する計測機材で、子どもたちがすばらしい記録を出して喜ぶ笑顔を見たときは、ホントうれしいですね。子どもたちの笑顔って純粋なんですよ。
スポーツを通じて、その笑顔に身近にふれあえる仕事ができる、そこが当社の魅力であり、この部署でのやりがいです。そういう意味では、将来の目標がひとつ実現したって言えます!
相澤 より多くの方に世界陸上を楽しんでいただきたく、新しい楽しみ方の提案ができればと思っています。競技中の選手のパフォーマンスデータを計測して、陸上競技のおもしろさを今までとは違った側面から伝えたいんです。例えば、三段跳であれば、3つのジャンプのそれぞれの距離・高さ・スピードデータなど、他の種目でも競技中のさまざまなデータを活用して、今までにはない視点を変えた見せ方によって陸上競技のエンターテインメント性をもっと深められると思うんですよね。機材を提供する我々側が、協賛企業としてそういった一助になれたらいいなあと思っています。
アスリートにとっても、競技のパフォーマンス向上につながる可能性はあるなと思っています。もちろん関係者と慎重に詰めていく必要はありますが、アスリートの最終着地点のデータだけではなく、さまざまな観点によるパフォーマンスデータを、世界陸上に限らず多くの大会でもさらに活用してもらえるように。そうした仕組みづくりができたらいいなと考えています。
相澤 スポーツは自分でやってみないと、そのおもしろさってなかなかわからないと思うんです。だから老若男女関係なく、だれもが参加できるような場が設けられたらいいなって思ったりもしています。そんな機会があれば、当社の最新計測機材を体験してもらえるかもしれませんし、「テレビや動画で見てみよう」「陸上をやりたい」という人が出てくるかもしれない。やっぱり経験をしてもらうって大事ですよね。大人になって陸上を始めて、いい記録を出す人もいますから。わたしの地元の運動会は、世界陸上ぐらい盛り上がりますよ(笑)。
相澤 大学時代にやっていた400mハードルを18年ぶりに再開しました。社会人になってから始めたという方と知り合って、練習方法などをアドバイスさせていただくうちに、自分も「やってみようかなあ」と思い始めたのがきっかけです。
そしたら先日、エントリーしていた陸上記録会の同組にデフリンピックの高田 裕士(ゆうじ)選手も参加されていて。高田選手、とても速かったです。惨敗しました(苦笑)。走り終わったあと、高田選手がレース動画を撮影されていないかなあと思って勇気を出して声をおかけしたら、すぐ送ってくださったんです。とってもいい方でしたよ!
今は週3回を目標に走っています。おいしいごはんとビールのために!!(笑)
(終)
相澤 洋平(あいざわ ようへい)/千葉生まれ
セイコーグループ株式会社 コーポレートブランディング部(2006年入社)
中学、高校、大学と、学生時代は陸上競技一筋で専門は400mハードル。努力すればするほど記録が伸びていく陸上のおもしろさに魅せられ、連日練習に明け暮れる。
入社後は、スポーツタイミング部で陸上や水泳などのスポーツ大会の計時計測の企画運営を担当。10年後、不動産管理部に異動となり、自社保有不動産の維持管理・設備投資の計画や入居テナント対応、グループ会社の不動産サポート、新規出店のための物件の選定と契約などに携わる。その後、コーポレートブランディング部に移り、デジタルマーケティングでブランド発信に注力する毎日。
趣味はスポーツ、最近は400mハードルの練習も再開。休日は、メジャーリーグにハマっている家族とテレビで試合観戦したり、その影響で野球を始めた息子と公園でキャッチボールなどを楽しむ。また、地元の仲間やパパ友と一緒にマスターズ陸上にチャレンジ中。
■コーポレートブランディング部での仕事内容(採用サイト内社員紹介)
https://www.seiko.co.jp/recruit/sgc/member04/
■セイコースポーツ
<Web>
https://www.seiko.co.jp/sports_music/sports/
<Instagram>
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<twitter>
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