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2025をつくる人たち

菊永きくなが ふみさん

異言語Lab.代表理事

菊永ふみ|誰にも真似できない「異言語」エンターテインメント

2024.08.21

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ことなるを楽しむ世界を創る”をミッションに掲げ、
さまざまな「IGENGO」を謎解きに取り入れた『異言語脱出ゲーム』の企画・運営を行う異言語Lab.。
その代表理事を務めるのが菊永ふみだ。
取材当日の6月某日、東京は朝から本格的な雨模様だった。
だが、待ち合わせ場所に鮮やかな傘を手に現れた菊永は、
“あいにくの天気”という気持ちをかき消してしまう楽し気な空気を纏っていた。
自身もろう者である彼女が描く言語の壁を超えた社会、創りたい未来とは―。

謎解きという目的がろう者と聴者をつなぐ
新しいエンターテインメント

―菊永さんたちが製作している異言語脱出ゲームはどのようなゲームなのでしょうか?

菊永 異言語脱出ゲームは、手話や身振りなどを使って謎解きをするゲームで、日本語などの音声言語を使う聴者と、手話などの視覚言語を使うろう者が一緒のチームになってゲームに参加し、コミュニケーションをとることで謎を解いていく『体験型エンターテインメント』です。異言語を使う人へ、どのようにすれば自分の想いを伝えられるのか。「手話を理解したい」「意思を伝えたい」気持ちと「謎を解きたい」気持ちが掛け合わされて、『答えを見つけたい』=『相手を知りたい・伝えたい』というリンクが生まれ一生懸命に意思を伝え合うんです。だから、謎が解けたときには単なるクリアの楽しさや嬉しさだけでなく、『コミュニケーションをとれた喜び』へと繋がるんです。このスタイルは誰にも真似できない、私たち異言語Lab.(いげんご・らぼ)だけのコンテンツだと自信を持っています。

―現在17作品あり、通常の謎解きゲームも含めると延べ35,000人が参加しているそうですね。ゲームはどんな内容なのでしょうか。

菊永 例えば作品の一つ「うしなわれたこころさがし」は南のとある島が舞台で、日本手話と、物語の世界に合わせて新しくつくった視覚言語で話す、という設定です。島には原因不明の“記憶や気持ち、感情を無くしてしまう病気”が蔓延していて、そこへ心と記憶を研究している研究員(参加者)が渡り、心の奥底に触れることのできる装置を使って心や記憶を取り戻して島の真実を掴む・・・というストーリー。島を案内するツアーガイドをろう者が担い、1人のろう者と4人の研究員(参加者)が1組になって、謎解きをしながらゲームを進めていきます。このように作品にはそれぞれに舞台や設定があります。

誰にも真似できない、異言語Lab.だけのコンテンツ
※ご本人提供

―参加者たちは異言語という環境にいるので、謎を解くためにもいつも以上に意思を伝えようとする気持ちが自然と強くなりますね。

菊永 そうなんです。謎を解きたいという思いから、本当に集中して分析してコミュニケーションを深めようとするんです。その体験を通して、異なる言語を持つ人と通じ合ったときのうれしさや楽しさなどの感情が生まれてくるのが、面白いところでもあります。

―ゲームの中でろう者と聴者が協力し合うというのも興味を引きます。これはどのようなことがきっかけで生まれたのでしょうか?

菊永 普段生活をしていると、ろう者と聴者が交じり合うのは難しいなと実感することが多々あって・・・。双方が一緒に働いていて、手話を一生懸命学んでくれてコミュニケーションがとれていたとしても、ランチタイムなどではろう者と聴者で分かれてしまうとか。そういう場面をよく目にしていたので、それぞれの文化の違いや大切にしている考え方を認め合いながら交じり合うことができないかなと考えていたときに、聴者の友人に誘われて謎解きゲームに参加したんです。それがすごく楽しくて!! その体験を当時働いていた福祉型障害児入所施設の園長に話したら、それなら自分で謎解きをつくってみたら?という話になって。その施設では聴者の方に手話を覚えてもらって交流する活動をしていたので、その交流会で、自分の考えた謎解きを披露したんです。それが異言語脱出ゲームのスタート。ですから始まりは趣味のようなもので、製作も仕事を終えた後や休日にしていました。

―施設の交流会で始まったゲームが、どのようにして今のビジネスになっていったのでしょうか。

菊永 異言語脱出ゲームを交流会で披露したのは2015年でした。そこから少しずつ交流会だけでなく他でも異言語脱出ゲームをしたいという話をいただくようになって。その頃に、現在異言語Lab.の理事をしてくれている牧原依里さんに出会ったんです。今振り返ると、彼女との出会いはとても大きかったですね。彼女は当時、映画宣伝に関わっていたこともあり、私には無い観点からのアドバイスをたくさんくれました。趣味の範囲でやればいいと思っていた私に、社会に出すべきなのではという話もしてくれて。それで2017年頃に一緒にやろうという話になり、2018年にPanasonicが主催している100年後の未来をつくる百のプロジェクト「100BANCH」に応募したら通って。そして今に至っていますが、本当にあれよあれよという感じでここまで来ていますね。

牧原依里さん(右から2番目)との出会いにより
異言語脱出ゲームは成長を遂げる
※ご本人提供(2023年7月世界ろう者会議@韓国にて
the Macau Deaf Associationの方々とともに)

没入できるストーリーと
本気の謎解きが魅せる珠玉の世界

―異言語脱出ゲームの舞台設定はどれもとてもユニークですが、作品づくりのアイディアはどのようにして生まれるのでしょうか?

菊永 その時々でつくり方は違っています。基本的には自分が「こうあったら楽しいな」という物語から世界観を考えてつくりますが、スタッフと対話を重ねてアイディアを持ち寄りながら構築していくケースもあります。

―「こうあったら楽しいな」という物語のヒントはどこから見つけているのでしょうか。

菊永 それもその時々で(笑)。例えばですね、2022年6月~11月にイベント「月夜の空想ミュージアム」を北海道の札幌芸術の森野外美術館で行いました。その美術館には74点の彫刻が展示されていて、それらをず~っと見ていると、「もしも彫刻作品が動き始めたら感動するし面白いだろうな」とか「もしかして夜の間は彫刻が動いていたりして」という空想というか妄想がわいてきて・・・。その妄想をヒントに物語が生まれていきます。妄想を膨らませて膨らませて、何が起こったら感動するのか、こんなことがあったら楽しいよね!という世界観をゲームで表現していくんです。

妄想こそ最大のヒントなり

製作をしているなかで、どんなところに楽しさや喜びを感じますか?

菊永 製作中はもう何も思いつかない!みたいな、行き詰まって苦しいことも多いのですが、突然パッと光が見えてくるときがあるんです。それが一番楽しい。でも、その光はいつ見えるかがわからないので、それまでは死んじゃいそうなくらい苦しい日が続きます(笑)。光をきっかけにどんどん話が展開していって、またつまずいたと思ったらまた閃いた!みたいなことが楽しいですね。それにスタッフとディスカッションをしていて良い案が出てきて、これいいじゃん!みたいに盛り上がるのも最高の時間ですね。

―実際にゲームに参加した人たちからはどんな感想が寄せられているのでしょうか。

菊永 XなどのSNSを見てみると、おかげさまでポジティブな評価が多いです。「手話と謎解きを掛け合わせることで意外とコミュニケーションがとれるんだね」とか「参加してみて本当に感動した。本気の謎解きでした」とか。あとは「手話×謎解きというので軽い内容だと思っていたら、深くて難しかった」「物語の中に自分が没入できて楽しかった」などなど・・・。目の前にいる人との対話を通じて謎を解いていくところは、イマーシブシアター的だという声もいただいています。

―異言語脱出ゲームを通して感じてほしいことはなんでしょうか。

菊永 シンプルに面白いと思ってもらう、この一択です。物語も謎解きも、それらを結びつけるガイドのろう者の方々とその表現、表現を引き出す参加者の力、互いのコミュニケーション能力などのすべてがエンターテインメントとして成立していると思っていますから。私たちはろう者に対して“してあげないといけない”ではなく、面白いコンテンツとしてきちんと社会に評価していただけるものをつくっていきたいんです。サポートではなく正当に評価をしていただくことがとても大事。逆にいえば、私たちも正当に評価してもらえる魅力ある作品を提供することがとても大切なんです。

求めるのは、コンテンツとしての評価
※ご本人提供

エンタメの世界に心が躍った原点
幼少期に体験した手づくりのイマーシブシアター

―エンターテインメントの世界に興味を持つきっかけはなんだったのでしょうか?

菊永 思い返すと、1歳から5歳まで通っていた言語訓練学校の夏合宿かな。スイカ割りをしようとみんなで近くの川へスイカを運んで冷やしたんです。冷えるのを待つ間に遊んでいたら、母たちが急に自作の“スイカ踊り”を始めて(笑)。子供たちが喜んで母たちの周りに集まって、みんなでひとしきり踊って盛り上がって。じゃあそろそろスイカを川から出そうとなったらスイカがないんです! 誰が持って行ったのかもわからないので仕方なく合宿所に戻ったら、そこに夢中でスイカを食べている大人たちがいて。どういうこと?って思いますよね(笑)。先生たちがその悪い奴らを懲らしめようと声をあげたら逃げていったので、残ったスイカを子供たちみんなで食べたんです。後々わかったことですが、これはイマーシブシアターとして親たちが企画したもので、スイカを食べていた悪い奴らはお父さんたちで(笑)。ある時は突然先生が倒れてしまって、聖霊の水を探して持ち帰って飲ませると生き返るとか・・・。こうした企画が合宿中に何回かあり、気付いたら物語の世界に没入して楽しんでいる自分がいたんですもしかしたらその体験が今に繋がって、異言語脱出ゲームをつくる原点となっているのかもしれないですね。

―先ほど空想、妄想を広げて物語の世界観をつくるというお話がありましたが、子供の頃から空想をよくしていたのでしょうか?

菊永 子供のときは空想とか妄想とはまったく無縁で、やらなきゃいけない、やるべきだという気持ちが強かったですね。漫画を読むわけでも映画を見るわけでもなく、ただただ目の前のことに集中するというところがありました。異言語脱出ゲームをつくり始めたばかりの頃、参考のためにいろいろな謎解きゲームに参加したのですが、素晴らしいアイディアを持っている人って本当に多いんですよね。あるゲームで自分がその世界に没入して、その高揚感がずっと残ったことがあって。私もそういう「没入させる」コンテンツをつくりたいと強く思うようになったんです。その頃からですね、空想や妄想をするようになったのは。

―子供の頃は“~すべき”という考えが強かったのは意外でした。

菊永 異言語脱出ゲームに携わっていくうちに、徐々に「やるべきである」という“べき思考”から抜け出せたような気がします。ゲームをつくり始める前は、今思うと申し訳ないですがキツイことばかり言っていたし、ちょっとプライドも高かったです。実際によくキツイとも言われていましたし(苦笑)。作品を一緒につくる上では、「こうするべき」「こうあるべき」というよりも、まずやってみる。やってダメだったらどこがダメだったのか話し合う。そこで修正してブラッシュアップしていくほうが断然いい。意見を出し合うと多くの発見がありますし、そうした作業はやっていて楽しいですから。そうした経験の積み重ねがあって少しずつ “べき思考”から解き放たれ、今はトライ&エラーの精神に変わることができました。それも異言語Lab.のメンバーのおかげなので、メンバーの存在はとても大きいです。

“べき思考”からトライ&エラーの精神へ。
メンバーの存在で、変わることができた
※ご本人提供

既存の概念を変えるため
新しい価値・文化の創造

―異言語Lab.の代表理事を務めながら、2023年に、知的障害がある作家とともに新しい文化を作るアートエージェンシー「株式会社ヘラルボニー」に入社しました。そこにはどのような思いがあるのでしょうか。

菊永 入社を決めた大きな理由は二つあります。ヘラルボニーの目指すビジョンが「異彩を、放て」なのですが、ウェルフェアチームを立ち上げ、障害のある方の本質的な活躍の場をつくりたいという話をいただいたんです。その話を受けて、一緒にやりたいという気持ちになったんですね。障害のあるなしに関わらず、「様々な人が自ら経験を積み、自分の力で耕していく」ということは、私の人生においてもとてもコアな部分です。異言語Lab.の設立を経て分かったことは、ろう者・難聴者が自分たちの力で試行錯誤して人生を耕すことで、自己肯定感が高まり、実際に社会が変わるという確信があります。異言語Lab.もビジネスとしてやってはいますが、ヘラルボニーはそれ以上に実際にビジネスとして成り立っています。より大きく社会を変えていける力、世界を変えていける可能性がヘラルボニーにはあると思ったのが、理由の一つです。

―もう一つはなんでしょうか。

菊永 「障害福祉」という既存の概念を変えるための価値や文化を創っていきたい、ということです。それに付随して異言語Lab.があり、社会を変えていくヘラルボニーと異言語Lab.の両輪で新しい価値・文化の創造に向かって進んでいく。そういう道を自分が歩いていきたい、その未来をつくりたいという思いからです。

―現在、ヘラルボニーではどのような活動をしているのでしょうか?

菊永 主にコンテンツづくりと障害者の雇用の推進に関わる仕事を担当しています。コンテンツの一つに、企業に向けたダイバーシティへの考え方を養う体験型プログラム「ダイバーセッションプログラム」があり、これはようやくセールスが始まったところです。企業から研修のサポートや、プログラムに対する講演や研修の依頼などもあり、実際に企業にうかがって対応しています。
障害者雇用はこれからますます重要になります。障害者雇用をどうやって進めていけばいいのか、福祉ではなく資本主義経済としてどのように運営していくのか。アートを例にすると、障害のある方がつくったアート作品が正当な対価で売られていく。それと同じように、他の事業でも正当な対価を得るにはどうしたらいいのか。支援ではなくて本当の意味で経済を回していくにはどうしたらいいのかを私も今、考えています。これは私にとっても楽しみを含んだ大きな挑戦です。障害者の雇用促進は異言語Lab.とヘラルボニーがともに見据える取り組みで、アプローチの方法は違いますが目指すゴールは一緒なんです。

障害者雇用において、本当の意味で経済を回していくことを目指す
※ご本人提供

―異言語Lab.では今後はどのような活動をしていきたいですか?

菊永 日本はもちろん、海外に異言語脱出ゲームを広げていきたいです。海外に支店ができて、ろう者の新しいエンターテインメントの拠点として盛り上げられたら! 異言語脱出ゲームというエンターテインメントがあることを世界にアピールするために、7月にフランスに行き、異言語脱出ゲーム「CAN YOU HELP THE ANDROID?」の公演を4日間開催します。これまで日本で異言語脱出ゲームを提供してきていますが、まだまだ社会は変わっていないという現状があります。そこで、フランスをはじめ海外の方々に体験してもらって、それぞれの言語の壁が取り払え、視覚言語はコミュニケーションをとれるエンターテインメントであることを証明したい。それができれば、手話の価値がもっと上がるはずです。これまでも海外で活動する機会があり、2023年にアメリカのオースティンで開催された世界最大級のイベントクリエイティブ・カンファレンス「SXSWEDU2023」では、オンラインで日本と繋いでワークショップを行いました。現地では手話がわからないいろいろな国の人たちが参加し、日本からろう者がガイドをして謎解きをしたんです。ゲームを終えて、最後に大きな拍手が起こったときは鳥肌ものでした・・・。同じ年に韓国での世界ろう者会議でもブースを出展し、「CAN YOU HELP THE ANDROID?」のプロトタイプを持っていきました。そうした経験から、今回もフランスで大きな手ごたえを得られると確信しているので、現地でどんな感動が待っているのかとても楽しみです。

―菊永さんご自身は今後どのようの夢に向かって進んでいくのでしょうか?

菊永 夢は異言語Lab.でもヘラルボニーでも、さまざまな人たちがそれぞれの違いの中で、お互いに違いを尊重し合って生きていける社会をつくっていくこと。これはビジネスの中で挑戦したいことですね。老後はどうしようかな、とたまに思ったりもしますが(笑)、幸い仕事そのものにはストレスをあまり感じることなく楽しくやれています。好きなことを仕事にできていますので、それは本当にありがたいですね。

視覚言語の価値向上へ。
いざ世界へ!
※ご本人提供

誰もが進みたい道を歩めるように
背中をそっと押せるサポーターに

―2025年にはデフリンピックが東京で開催されます。デフリンピックが東京で開催されることで期待することはありますか?

菊永 デフリンピックにはいろいろな国の方が参加するので、世界の手話をたくさん見ることができますよね。それを機に、私たちのコミュニティというか、文化や社会の在り方を知ってもらえたら・・・。実際にコミュニティに触れ、お互いの仲を深めて正しい繋がりができたり、違いを面白がったりできる。そんな機会になればいいですね。

―デフリンピックで活躍が期待されているデフ陸上の山田真樹選手が異言語Lab.のブランドストーリーに登場しています。どのような縁があるのでしょうか?

菊永 実は山田くんは小学生の時から知っているんです。福祉型障害児入所施設で働いていたときに、ボランティアでろう学校に行っていて。そこに山田くんがいました。異言語Lab.のアテンドキャストリーダーの奥村泰人くんや手話エンターテイナーの那須映里さんにも、小学生や中学生の時に出会っているんですよ。彼らが大学生か社会人になるかくらいのときに、奥村くんに一緒にやらないかと声をかけたんです。それで彼が連れてきたのが山田くんだったり、映里さんだったり。彼らはお客さんの会話を引き出す力が本当に素晴らしい。お客さんが楽しんで心から笑っているのを見ると、ここまでできるのだなと本当に尊敬しています。

スポーツや文化、
各界で活躍するデフのみんなとともに

―デフ陸上・棒高跳の佐藤湊選手はどのようなつながりなんですか?

菊永 湊ちゃんも奥村くんが連れてきました(笑)。コロナ禍では対面のイベントが全部中止になったので、オンラインのイベントに切り替えたんですね。それでメンバーを集めていた際に、奥村くんが湊ちゃんを連れてきてくれたんです。コロナ禍だったので、当時は対面で一回も会わないまま、オンラインで練習して公演をやったんですよ。オンラインイベントでも持ち前のキャラクターで場をしっかり盛り上げてくれて・・・。とても頑張ってくれた一人です。

―最後に読者に向けてのメッセージをお願いします。 

菊永 デフリンピックの意義って何だろうと考えたときに、ちょっと冷たい言い方になりますが・・・オリンピックを目指せばいいよねという考え方もあると思ったんです。なのに、なぜデフリンピックがあるのか?それはやっぱり、自分の聴覚障害を肯定するためのすごく大切な場所なんです。きっとデフリンピックという舞台は、自分の背中を押してもらえるきっかけになったり、生き方を表現したり、自分の道を歩けるところなんだと思うんです。
そして2025年のデフリンピックが何かをもたらした先に、デフリンピックがあってもなくても、障害のある人たちが自分の道を進むうえで、自分はこうありたい・こうなりたいという未来に対して、誰かが背中を押してくれたり、選択肢が広がって自分の行きたい道に行けるような環境になれば・・・。私もこれまで多くの皆さんに背中を押してもらってきました。それがなかったら異言語Lab.も今の私もありません。今度は、私が誰かの背中をそっと押せる人になりたい。そして、自由に自分の道を進める環境をつくっていきたいと思います。

菊永 ふみ(きくなが ふみ)/東京生まれ
異言語Lab.代表理事

1985年生まれ。異言語脱出ゲーム開発者。コンテンツクリエイター。
株式会社ヘラルボニー経営企画室ウェルフェアチーム。
2015年に福祉型障害児入所施設でグローバル金融機関の社員とろうの子供たちの交流企画として「謎解きゲーム」を実施し、同年に異言語脱出ゲームを初開催。2018年に異言語Lab.を設立。主な作品に「うしなわれたこころさがし」、「5ミリの恋物語」、NHKとの「異言語脱出ゲームONTV」、札幌芸術の森野外美術館との「空想ミュージアムシリーズ」など多数。第14回若者力大賞受賞。
これまでの異言語Lab.での経験を踏まえ、さらに障害のイメージを変えたいという想いを胸に株式会社ヘラルボニーへ入社。コンテンツ開発と障害者雇用推進を主に担当。

<異言語Lab.>
Web:https://www.igengo.com/
X:@igengo_lab
Instagram:igengo.lab

text by 木村 理恵子
photographs by 椋尾 詩

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