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子供スポーツ体験教室 第1回『防災×デフリンピック』レポート

2024.10.11

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防災とスポーツを組み合わせた特別プログラムを、デフアスリートと一緒に体験!

このたび始まった新企画「TOKYO FORWARD 2025 子供スポーツ体験教室」
子供たちがきこえる・きこえないにかかわらず一緒にスポーツを楽しみながら、大会の多様な魅力に触れることのできる教室を全4回で実施します!
※「TOKYO FORWARD 2025 子供スポーツ体験教室」特設ウェブページはこちら

世界の舞台で活躍するトップアスリートたちと、子供たちが一緒にスポーツを楽しめる貴重な機会であり、きこえる・きこえないにかかわらず参加できる、スポーツを通じて多様性と協力を体感できる場です。
大会のいろいろな魅力に触れるとともに、みんなで体を動かしながら仲間と協力する楽しさから「一緒につくり、楽しむ」共生社会への気づきも体感してもらい、新しい発見やチャレンジへの意欲につなげてもらうことを目指しています。

第1回は10月6日(日)開催『防災×デフリンピック』
東京都立中央ろう学校の会場にはきこえない児童11名を含む20人余りの小学生が参加し、防災とスポーツを組み合わせた特別プログラムを、デフバレーボール女子日本代表の中田美緒選手と一緒に体験。
大きな災害時にはどういった対応が必要となるのか、また、きこえない人にはどういったサポートが大事になるのかを、スポーツを通じて考えながら学んでいきました。

先日のデフバレーボール世界選手権で金メダルに輝いた中田美緒選手。
手話の拍手で迎えられます

中田選手から、きこえる人ときこえない人とでコミュニケーションをとるのに少し不安そうな参加者に対して、「大丈夫。お互いがやりやすい方法を探してみて、どうすれば楽しくできるか一緒に考えてみよう!」と声がけ。

少しずつ緊張が和らいできた参加者たちは、プログラム体験の前に“災害時にろう者が困ること”を学びます。

お話してくれたのは、遠隔手話通訳サービスを提供する株式会社プラスヴォイスより、ご自身もろう者である森本有加さん。
ろう者が困ることの一つは「音声のアナウンスが聞こえない」こと。緊急時には避難等のアナウンスの多くが音声で伝えらえるため、ろう者にはその情報が届きません。
そしてもう一つは、「周りの人たちの話がわからない」こと。避難所ではそれまで接したことのない人たちとの生活も強いられてしまいます。普段ろう者と関わったことのない人も多い中、ろう者は自ら話もできない、話をしても通じない・・・そんな状況に陥ってしまうことがあり、「孤独を感じてしまう」と言います。

今年の1月1日に起きた能登半島地震。
その被災地のリアルも伝えてくれた森本さん

「ただ、実はその前に大きな問題があるんです・・・。」

それは『ろう者だと理解してもらえない』こと。
見た目ではわかりにくい障害と言われている聴覚障害。補聴器や人工内耳をつけている人は多少わかってもらえるかもしれませんが、中にはつけていないろう者もいます。

どうしたらろう者だとわかるのか・・・。
この子供スポーツ体験教室では、きこえる人ときこえない人が同じチームに。それならば!ということで、まずはチーム内で自己紹介をしてみることに。

きこえない人への気づき。ゆっくり話してみたり、手振り身振りで表してみたり、文字に書いてみたり・・・。
色々な方法でコミュニケーションをとってみることで、きこえないことに対する理解とともに、「どうしたら伝えらえるのか」を一生懸命考えて実践する参加者たち。

すっかり打ち解け始めた参加者たちは、いよいよ本日の特別プログラム「防災スポーツ®」へ!

紹介してくれるのは、防災技術と体力を競う、防災スポーツプログラム『防リーグ®』を企画運営している 篠田大輔さん(株式会社シンク)。
ご自身の大地震での被災経験、そして過去の教訓を踏まえ「災害に備える大切さ」を伝えようと、スポーツを通して防災を学べるプログラムをつくり出しました。

※『防リーグ』とは・・・
「火災時の煙避難」や「負傷者の搬送」といった災害前後に役立つ様々な防災の知識と技を、 競技性を持たせ楽しみながら身体で覚えるプログラム。
公式ウェブサイト:https://bouspo.jp/

1995年の阪神・淡路大震災で被災した篠田さん(写真右)。
その被災経験をもとにつくられたのが防災スポーツ

今回の体験プログラムは全部で5つ。

キャタピラエスケープ
レスキュータイムアタック
キャットサイクルレース
ゴー!ゴー!キャリー
防災知識トレーニング

そして、今回の特別ルールは「声出し禁止」! 被災の現場できこえない人をどのように助けるか、音や声に頼らない解決方法をみんなで探しながら体験していきます。

まずは、キャタピラエスケープ
火災時の煙の中や低所など、姿勢を低くして行動する速さを競うレースです。

口元をハンカチなどで覆うところまでしっかり
びっくりするくらい動きづらい・・・

キャタピラに入ると、前がまったく見えない・・・。それでもまっすぐ進むには周囲の呼びかけが一つの助けとなりますが、音がきこえないろう者には届きません。そのため今回は、「呼びかけ」を見える化したコミュニケーションボードを活用しました。

自分がまっすぐ進んでいるのかも判断のつかない状況です。コミュニケーションボードを使いながらも、かなり苦戦している様子。それでも、どうやったらうまくいくかをチームで話し合いながら、真剣に取り組む参加者たちでした。

 

レスキュータイムアタックは、災害時でも入手しやすい”毛布”を担架代わりに使い、負傷者を安全に速く運ぶ障害物レースです。

まずは「せーの」で負傷者を持ち上げるところから。
声出し禁止のルールの中、互いに目を合わせたり、リーダーの首の動きに合わせたり、いろいろな方法で息を合わせることにチャレンジしました。

負傷者をなるべく動かさないように慎重に・・・。
障害物を超えたり、

細い道の上を通ったり、

限られた場所しか歩けない道を進んだり。

手がふさがっているため、コミュニケーションに使えるのは首や肩、そして目の動き。
1回目ではなかなか息が揃わなかったチームも、反省を踏まえてどこが良かったか・どこを改善したらよいかを話し合い、次の回では好タイムを連発していました!

続いては、キャットサイクルレース
土砂やガレキなどでは小回りが利き悪路にも強い「一輪車」を使う障害物レースです。

慣れない一輪車の操作に戸惑いながらも、上手に障害を超えていく参加者たち。
バランスを崩して中の荷物を落としてしまったときは、チームのみんながダッシュで拾ってあげます!

ゴー!ゴー!キャリーは、避難所などに届くたくさんの物資をチームで協力して運搬し、効率よく限られたスペースに収納します。体力と知力が必要となる競技です。

きれいに収納するためには正しい順番で物資を置いていくのが必須!
みんなでコミュニケーションを取り、順番を確かめながら進めていきます。

4つのプログラムで身体を動かしながら防災を学んだみんなは、防災知識トレーニングに挑戦!
災害への備え(家族の連絡手段、家具の転倒防止、備蓄など)や災害時のライフライン断絶時に生き抜く知恵を、トレーニング形式で学ぶプログラムです。
会場の各所に置かれたヒントを頼りに、チームでその内容を確認し、防災に関するクイズに答えていきます。

デフリンピックを掛け合わせた、この日だけの防災スポーツ特別プログラムはこれにて終了。
すべてのプログラムを終えた参加者へ篠田さんは、「災害など困難な状況にあったとしても、きこえる・きこえないにかかわらず、みんなで支え合い生きていくことが必要」であり、スポーツを通じて防災を学ぶことで、「共に助かる・助け合うためにはどういうサポートが必要なのか」を体で感じてもらえていたら嬉しい、と想いを伝えました。

「自分の周りにも、もしかしたらきこえなくて困っている人がいるかもしれない。」
今日の経験を通して、ふだんの生活からろう者へ意識を向けてみてほしい、と中田選手。2025年にはたくさんのろう者が東京に訪れます。そのとき、「今のみんななら、いろいろなフォローができるよね」と投げかけました。

参加者からは「スポーツを合わせていたことで、防災を楽しく勉強できました。手を使ってコミュニケーションをとっていたので、外国の方など言葉が通じない人にも、同じように手を使ったりして話せるなと思いました」という声が。
「支援物資を届ける体験をしたので、それを活かして、きこえない人や高齢の方などいろいろな人に届けてあげたい。そのときに今日のように、しっかりお話できるようにしていきたいです」と、今後周りの人を助けるための気づきを得られたようでした。

きこえないことへの理解、そして共に生きていくために大事なことを学べた「防災×デフリンピック」。
最後はデフリンピックの手話を教えてもらって、みんなで記念撮影♪

イベント後にはユニバーサルコミュニケーション機器の体験も!
手話や音声を文字化して会話することができるSureTalk(シュアトーク)。きこえる人も教えてもらった手話にトライしながら、みんなで体験しました。

デフリンピックを戦うアスリートへメッセージが届けられる体験も実施。
本日のゲストの中田美緒選手にもしっかりメッセージを送っていました。金メダルを目指して、頑張ってもらいたいですね!

次回の子供スポーツ体験教室は12月14日(土)開催(予定)『デフサッカー体験教室』
お楽しみにー♪

《子供スポーツ体験教室の概要はこちら

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