2024.10.23
都内全小学校34万人へ配布!『学ぼう!デフリンピック』特別授業を開催
2024.07.29
アンバサダー 長濱ねるさん・川俣郁美さん、デフ柔道 佐藤正樹選手と一緒に楽しく学習
より多くの子供たちにデフリンピックを知ってもらいたい、手話をはじめとした耳のきこえない、きこえにくい方々の文化を知ってもらいたい、という思いを込め東京都が制作したのが、『学ぼう!デフリンピック』というオリジナル学習コンテンツ。
漫画やクイズを通して子供たちが楽しく学べる内容と好評の『学ぼう!デフリンピック』をこのたび冊子化し、2024年7月3日の東京2025デフリンピック開催500日前を機に、都内全小学校1,382校の4~6年生約34万人に配布しました!
(PDF版はこちらから / 特設ウェブサイトはこちらから)
そし7月19日、この『学ぼう!デフリンピック』を活用した特別授業を品川区立台場小学校の6年生の皆さんと一緒に開催しました。
当日のダイジェスト映像はこちら♪
二人のろう者、川俣郁美さんと佐藤正樹選手が届ける特別授業
第一部は教室での授業。講師をつとめたのは東京2025デフリンピック応援アンバサダーであり、自身もろう者の川俣郁美さん。そして今年の世界ろう者柔道世界選手権大会で金メダルを獲得したデフ柔道の佐藤正樹選手のお二人です。
授業は川俣さんの「デフリンピックって知ってる?」という問いかけからスタート。
「オリンピックを知ってる人?」「パラリンピックは?」 全員が手を挙げます。
「じゃあ・・・デフリンピックを知ってる人!?」 なんとこちらも全員が挙手! 全員の手が挙がったことに川俣さんは「みんなすごいね!」、佐藤選手も「うれしいですね」と笑顔に。
「みんなはよく知ってくれているけれど、日本では実はデフリンピック知らない人がまだまだ多いんです」と川俣さんは続け、『デフリンピック』という言葉の意味を説明。
「デフ」は英語できこえないことを意味し、そこに「オリンピック」という言葉を掛け合わせて生まれた言葉が『デフリンピック』。手話ではどのように表現するのか、みんなで練習しました。
ここで佐藤選手からクイズ!
「来年、ここ東京でデフリンピックが開催されますが、日本でデフリンピックが開催されるのは何回目でしょうか?
①はじめて ②2回目 ③3回目」
これにはみんなも頭を悩ませている様子。佐藤選手から「正解は①はじめて です!」と答えが発表されると、驚きとともに、日本で初めて行われるデフリンピックがより楽しみになったという声も聞こえてきました。
声に代えて「伝える」ためには?
クイズは続きますが、今回は形式をちょっと変えて実施。「佐藤選手にクイズを出してもらうんですが、皆さんが答えるときには手話通訳はお休みします。みんなが私たちにどうやって伝えるのか、いつもと違う方法で考えながらやってみましょう。声で伝えるんじゃなくて、他の方法で私と佐藤選手に答えを伝えてください」。
クイズは『世界中で耳のきこえない人は何人にひとりでしょうか?』
約束どおり、ここから手話通訳はストップ・・・。すこし戸惑うみんなでしたが、やがてそれぞれのかたちで伝えはじめます。
それぞれに工夫をしながら、数字を伝えてみる児童たち。川俣さんと佐藤選手は、「うーん、惜しい!」「もうちょっと上かな?」「いや、もうちょっとだけ下!」というヒントを身振り手振りと表情の豊かさでみんなに示していきます。川俣さんも佐藤さんもみんなもとても楽しそう♪
ちなみに正解は・・・20人に1人!皆さんご存知でしたか?
手話通訳を介さないこのクイズで伝えたかったことは2つ。
きこえない・きこえにくい人はきこえる人にとっても実は身近な存在であること。そして、声を使わなくても身振り・手振り・表情でコミュニケーションが取れること。
実際に自分で考えてトライしてみたことで、一人ひとりが実感につながった様子でした。
きこえないことの困りごとと工夫
きこえる人は日常の中で音を合図にして動くことが多い。でもきこえない人は、日常生活でも校内放送がきこえなかったり、災害時の放送や救急車のサイレンがきこえなかったり、来客に気づけなかったり。「きこえないことによる困りごとはやはりいくつかある」と話す佐藤選手。
一方で、そうした困りごとにも工夫次第であることも強調。デフスポーツでは、サッカーの場合は笛のかわりにフラッグを使う、陸上競技の場合はスタートランプを使って、音ではなく光を見てスタートする。佐藤選手が取り組んでいる柔道の場合は、審判からの「待て」などの指示を、選手の体をさわることで伝えます。
日常生活でもさまざまな工夫が。音声で話したことばを文字にしてくれるユニバーサルコミュニケーションといったデジタル技術。川俣さんも佐藤選手も家にランプがあり、お客さんが来ると呼び鈴のかわりにランプが光ることで来客を知らせてくれます。
生活での困りごとを「バリア」といいますが『工夫次第でその「バリア」は取り除くことができる。そうすることで、学校や生活でもみんなで一緒に楽しく過ごすことできる』と川俣さんは話してくれました。
さらに話題は深まります。「きこえないことってかわいそう、なんてことをわたしは全然思っていません。きこえなくて良かったなって思ってるんです」と語るのは川俣さん。
「だって今日、みんなに会えました。もしわたしがきこえていたら、皆さんには会えなかったかもしれません。きこえないからこそみんなに会えた。そんなふうに、きこえないからこそ見えてくるものもあります。だから楽しいこと、いっぱいあるんです」。となりできく佐藤選手もうなずいていました。
手話を学ぼう!
手話は、手だけで話すものではなく、表情や体の動きも大切な『目で見ることば』。手話は世界にひとつだけではなく、200以上存在しているのです。
「学ぼう!デフリンピック」を見ながら、手話にトライ!「ありがとう」ひとつとっても、言い方ひとつで伝わり方が変わるように、手話も表情や動きで伝わり方がまったく違うということを川俣さんは説明します。友達への「ありがとう」は親しみを持って、先生への「ありがとう」は感謝の気持ちを込めて。身振りの大きさや表情が大きく変えることで、手話が単に手の動きだけの言語ではないことをあらためて伝えます。
「がんばれ」の手話も無表情では伝わらない。感情を込めることが大事。みんなもそれに合わせて大きく、気持ちを込めて、両手でこぶしをつくって2回下におろす手話を実践していました。
いろいろな人と出会って、いろいろな気づきを
時間も終わりに近づいてきました。川俣さんが「最後にみんなに伝えたいことがあります」と話しはじめました。「さっき、きこえなくて良かったという話をしましたよね。きこえないからこそ気づけることがあります。それは、みんなもそうなんです。皆さんにも、皆さんにしか気づけないことがあるんです。いろいろな人がいて、いろいろな考え方がある。お互いの目線で気づきあって、そうしてみんなにやさしい社会がつくっていければいいですよね。皆さんも是非、これからいろいろな人と会って、いろいろな話をすることで、自分の将来の夢が見えてくると思います。そして、夢をかなえる方法も見えてくるはずです。どうか、いろんな人と出会って、いろんなお話をしてみてください」。
「僕も、川俣さんと気持ちは一緒です」。そう語る佐藤選手からは「僕は来年、デフリンピックで金メダルを取ることを目標にがんばっています。東京武道館での試合、是非皆さん応援に来て、先ほど覚えてもらった『がんばれ』の手話を使って表現してみてもらえるとうれしいです!実際、僕は試合中に緊張するんですよね。でもみんなが応援してくれれば、気持ちをきりかえて気合を入れられる。それでメダルを取れるかもしれない。皆さんの応援の力を貸してください!応援よろしくお願いします」と、東京2025デフリンピックへの意気込みが。そうして、第一部は全員の盛大な手話の拍手で終えられました。
長濱ねるさん&ゆりーとも登場!知って踊って楽しもう♪
第一部の授業に続いて、6年生の皆さんは体育館へ。
体育館は東京2025デフリンピック大会エンブレムのモニュメントや、音声をその場で文字にしてくれるUC(ユニバーサルコミュニケーション)技術を使ったモニターなどが並び、すっかりデフリンピック応援モード!
「今から実際の競技について、そして誰もが過ごしやすい社会について、特別ゲストの皆さんともっと詳しく勉強していきましょう!」第一部の授業で習った手話の拍手でお出迎え。
最初に紹介されたのは、第一部の授業でも講師をつとめてくれたデフ柔道の佐藤正樹選手。そして川俣さんと同じく、東京2025デフリンピック応援アンバサダーをつとめる俳優の長濱ねるさん。さらには東京都スポーツ推進大使であり、東京2025デフリンピック公式マスコットにも任命されたゆりーとが登場!
東京2025デフリンピック応援隊の品川区ホッケー応援キャラクター・シナカモン、品川区ビーチバレーボール応援キャラクター・ビーチュウ、品川区ブラインドサッカー応援キャラクター・やたたまも登場し、体育館は一気に賑やかで華やかな雰囲気に。
長濱さんは「こんにちは、長濱ねるです」と手話で自己紹介。「今日はみんなで楽しく勉強しましょう!よろしくお願いします」とご挨拶。
佐藤選手はデフ柔道について説明。「柔道は大切なことは、相手を敬うこと、礼儀を体で表現するスポーツです。きこえる人の柔道、デフ柔道、知的障害のある人の柔道、いろいろなルールで試合を行っていますが、実際に試合が始まってしまえばみんな平等なんです。平等に競技ができるのが柔道の魅力だと思っています」と語ってくれました。ご自身の柔道をはじめたきっかけなどもお話いただき、佐藤選手がまさに心技体そろった一流の柔道選手であることが伝わってきました。
デフスポーツならではの「光」の工夫
続いて、デフスポーツに用いられるさまざまな情報保障の器具を説明。まず紹介されたのは、デフ空手で使われる情報保障用のランプです。「やめ」の合図の時は赤いランプが光る、試合終了の15秒前には青いランプが光り、選手に合図として伝えることができます。
次に紹介されたのは、陸上競技で使われるスタートランプ。クラウチングスタートの態勢を取ると、ちょうど目の下にランプがある状態になります。「位置について(On your marks)」で赤色に、「用意(Set)」で黄色、そしてスタートの瞬間(ピストル音)に緑色に変わります。
長濱さんからも「デフスポーツを勉強する中で、さまざまな工夫があることを知りましたが、こうして初めて実際に見てみると、難しそうだなと思いました。さきほど体験してくださった児童さんも『難しい』とお話していましたが、目からの情報のみで競技をやっていくことは、より神経が研ぎ澄まされるような感覚になるんじゃないか、と思いました。また、こうやって実際に見て、知っていくことで、デフスポーツがより身近に思えるようになりました」と、自身の目で見て・感じたからこその感想が出ていました。
普段の生活にも役立つ情報保障機器って?
こうした情報保障機器はスポーツだけでなく、普段の生活の中でも役立つものがどんどん開発されています。今回はそのうちの一つ「Ontenna(オンテナ)」をみんなで体験!
制作をされている富士通株式会社の今村さん、田中さんからOnntenaの紹介。「音を振動と光で感じることができる装置」であり、児童の皆さんにもOntennaを手首に巻いてもらいました。
Ontennaがみんなに行きわたると、今村さんがOntennaのコントローラーを見せます。これを使って、全員のOntennaをいっせいに振動させることができる、とのこと。今村さんが「こんにちは!」と言うと、みんなはいっせいに驚きの声をあげます。
声に連動して、Ontennaがいっせいに振動。大きな声だと大きく振動して、小さな声だと静かに振動する。さらにはコントローラーをプッシュすることで、リズムも感じることができます。実際にコントローラーをリズミカルにプッシュすると、長濱さんも思わず「すごい!」と感嘆の声をあげました。
みんなの様子を受けて田中さんが語りかけます。「これで耳がきこえる人も、きこえない人も、一緒にダンスすることができると思いませんか?」
みんなで踊ろう「しゅわしゅわ☆デフリンピック!」
そう、今回はOntennaを装着して、みんなが手話に触れるきっかけになるようつくられたダンス楽曲「しゅわしゅわ☆デフリンピック!」を全員で踊ります!この楽曲は、手話の動きを振り付けの一部にとりいれたダンスで、きこえる・きこえないにかかわらず一緒に踊って楽しむことができます。
今回、振り付けを教えてくれるのは富村陽子さんです。
(しゅわしゅわ☆デフリンピック!についてはこちらから)
みんなが一生懸命参加してくれた「しゅわしゅわ☆デフリンピック」踊ってみよう!は大成功。
佐藤選手はOntennaをつけて踊ってみて「すごいですね! 実はダンスが苦手で・・・リズムを取るのが苦手なんですね。でもOntennaが振動でリズムを伝えてくれるので、みんなと同じように踊ることができて楽しかったです。ありがとうございました!」と語ってくれました。
長濱さんからは「私もとても楽しかったです。情報保障について知ることもできましたし、みんなと一緒にダンスを踊る中で、いっしょに楽しく手話を学ぶことができました。ありがとうございます!」と話してくれました。
児童の皆さんにとっても、貴重な気づきと楽しさを得られた時間になっていたらうれしい限りです。
「しゅわしゅわ☆デフリンピック」、皆さんも是非踊ってみてくださいね!
(しゅわしゅわ☆デフリンピック!についてはこちらから)
こうして特別授業は終わりましたが、授業が終わったら、放課後です。放課後といえば、そう、クラブ活動! 台場小学校のダンスクラブのみんなと、長濱さんと佐藤選手は「しゅわしゅわ☆デフリンピック」を学校のランチルームをお借りしてもうひと踊り♪
台場小学校の皆さん、この特別授業に関わってくださった皆さん、本当にありがとうございました。これからも引き続き、東京2025デフリンピックの盛り上げ、そしてみんなが暮らしやすい社会づくりに向けて、一緒に取り組んでいきましょう!
photographs by 椋尾 詩
新着
2024.02.13
2024.11.01
2024.11.01